ギターワンポイント講座『チューニングの仕方・練習方法その1』

ギター、ことさらクラシックギターやフラメンコギターといったナイロン弦を使用したギターはチューニングが変わりやすい性質のある楽器です。
言い方を変えればチューニングが狂いやすい、音を安定させるのが難しい楽器であるとも言えます。
初心者の方はギターを購入する際等にチューナーという機械を買うか、あるいは最近ではスマートフォンのアプリを使用する方も多いかと思います。

これら文明の利器は大変便利なもので、細かい音程の差が耳でわからない場合でもある程度以上の正確さでチューニングを補助してくれますし、奏者の体調等不安定要素に関わらず音程を判定してくれます。
私はこの文明の利器はギターを弾く人ならば必ず持っていた方がよいと考えていますが、一方でこれに頼り過ぎない感覚と技術を身に着ける事も大切だと考えています。

美しい音楽を奏でる為には先ず美しく整った調弦を、美しく整った調弦が出来るようになる為にはチューナーに頼り過ぎないチューニングをするように心がけましょう。

さて、今回はギター演奏に於けるスタンダードな調弦として1弦から順番にEBGDAEに合わせる調弦で話を進めて参ります。

チューナーが普及していない時代には我々ギタリストは音程を確認するポータブルなアイテム、音叉や調子笛という道具を使ってチューニングを行っていました。音叉については今日でも楽器屋さんに行けば普通に販売している事が多いので、今回は音叉を使用する前提で楽譜を作成しました。

音叉は叩くと毎回同じ音程の音、ギターで使用される440hzの音叉の場合はラ(A)の音を発します。これをギターのボディやネックで響かせたりしつつギターのペグ(糸巻き)を回して譜例にあるAの音を合わせて行きます。

譜例1

譜例には⑤弦5フレットのハーモニクスと①弦5フレットの実音、2種類のポジションが提示されていますが、⑤弦5Fのハーモニクスを出すのが難しい方は1弦側からやってみるか、⑤弦5Fハーモニクスの2オクターブ下の⑤弦解放弦(左手で押さえずに弾く弦)の低いA音で合わせてみましょう。
(上述のチューナーには、機種によってはある特定の音程の音を発する機能もついているものがありますので同様に使用可能です。音程を変えられたり音が減衰せずに続くという点で、此方の方が使い易いでしょう。)

この際に音程が近づいていくと音と音がぶつかり合ってうねりのようなものが聴こえるようになってきます。うねりがわからない場合はゆっくりとペグを回して微妙なポイントを探すように上げ下げしてみましょう。
チューナーを持っている方は補助的にチューナーを使うのもよいですが、必ず耳で聴いて音の揺らぎが発生する事を確認しましょう。

ある程度以上音程が揃うと、うねりがごく小さくなって2つの音がぶつからずにすっきりと響くようになります。チューナーで確認出来る方は、ほぼ音程が合うライン付近にまで針が来ている事が確認出来るのではないでしょうか。

さて、特定の1本の弦のチューニングが完了したら、その弦を中心に他の弦を合わせて行きます。

再度上記譜例をご覧下さい。それぞれ解放弦で出る音を1本低い音が出る弦で同じ音程のするフレットを押さえて音を比べながら合わせて行きます。
具体的には、ギターは②弦に対する③弦の4フレットが同じシ(B)になる部分以外は隣り合った高い音の弦に対して低い方の弦の5フレットが同じ音程になるように出来ています。(例:⑤弦解放=⑥弦5Fでラ(A))

ここで先ほどの音叉等を使ってうねりを聴きとる方法と同じ手順で、最初に音程が合っているほうの弦の音を鳴らし、後から合わせたい音を鳴らしてよく聴いていきましょう。何度も細かく鳴らして聴くよりは、それぞれ長い音を鳴らして減衰していくそれぞれの音のラインを耳で観るようなイメージで聴いていきましょう。

出来るだけ静かな環境で、あまり強く弾き過ぎない方が弦の振幅が不安定にならない為に音程が正確に把握しやすいようです。

先ずはこの方法で楽器の「調弦」を「聴く」感覚を身に着けていきましょう。

さて、次はハーモニクスという技術が出来るようになってきた方向けの方法をご紹介します。楽器屋さん等に行くと店員さんがこの方法でチューニングをしているのを見た事がある方も多いのではないでしょうか。

仕組みとしては先ほどの解放弦に対して低い音の弦の5Fと同様の方法なのですが、今度はそれぞれをハーモニクスを使用して合わせていく事になります。なお、ここでも②弦対③弦のみ他と違うやり方が必要になります。
(下の譜例では③弦の12フレットのハーモニクスに対して②弦8Fでソ(G)で合わせるように書いてありますが、ここだけ実音でやっている方も多いようです。)

譜例2

ここでは共にハーモニクスで、音が高い方の弦の7フレットに対して低い方の弦の5フレットを合わせて行きます。(例:⑤弦7F=⑥弦5Fのミ(E))
上記と同様、音程を近づけてうねりを聴き、最終的にはそれを解消していく方法でチューニングをしましょう。
ハーモニクスは一度鳴らしてしまえば音が持続する為両手共に自由に出来ますので、慣れてしまえば此方の方が楽にチューニングが出来るでしょう。

さて、ここまで来れば調弦が完了したと思ってしまいそうですが、最後に離れた弦同士で音がぶつからないかを確認する事が、より美しい調弦を習得する為の耳を育てる事に繋がります。

下記譜例にあるように、オクターブや異なる弦の同じ音程を順番に鳴らして音程が大きくずれて居ないか、変な感じに聴こえないかを確認しましょう。

譜例3

思っていたよりも音がぶつかっていたり、違和感が大きい場合にはオクターブも確認しつつ、もう一度上記のいずれかの方法でそれぞれの弦の音を比べて調整してみましょう。ある程度調弦が正確である自信が持ててきたら幾つかの和音を弾いてみるとよいでしょう。

今までのコード弾きと比べて、変化を感じられるでしょうか?

楽器によってはフレットの打ち方や減り方、その他の原因でどうしても音程が合わない場合もあるかも知れませんが、そのような場合でも出来るだけ綺麗に和音が鳴るようにバランスをとっていきましょう。

拘って練習していけばご自分のギターが以前とは全く違った美しい音楽を奏でるようになるでしょう。

音楽によっては、調弦が正確過ぎずに微妙な揺らぎがあった方が「いい感じの雰囲気」が出る事もあるかも知れませんが、その場合は意図的に狙って崩せばよいのではないかと、私は思います。

参考資料として、練習素材コーナーに本記事の譜例をまとめたものプラスαのPDF楽譜やウェブ音叉等が御座いますのでよかったらご覧下さい。

中々文章や譜面だけでは伝わりにくい話かと思いますので、お近くの方でチューニングトレーニングをしてみたい方はお気軽に当教室までお越し下さい。

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